秩父鉄道

C58牽引の「パレオエクスプレス」。およそ2000万年前まで秩父地方に生息していた海獣パレオパラドキシアが名前の由来

埼玉県北部を東西に結ぶ秩父鉄道は、武甲山で産出される石灰石輸送路線として発展してきた。上越新幹線とJR高崎線に接続する熊谷駅を軸に羽生駅と三峰口駅をつなぐ全長71.7kmの路線である。地方鉄道としては、めずらしく全駅有人駅となっている。三峰口駅から秩父市大滝地区へ路線延長計画が存在したが中止となったが、三峰口駅の引き上げ線はその名残で、かつては鉱山のホッパーまでつながっていた。

秩父鉄道では「都心から一番近い蒸気機関車」をキャッチフレーズに、C58形363号機(通称「シゴハチ」)が牽引する「パレオエクスプレス」を走らせている。この363号機は、C58形では唯一の動態保存されている車両で、現在秩父鉄道でしか見ることができない。1972(昭和47)年に廃車となり、その翌年から埼玉県北足立郡吹上町立(現在の鴻巣市立)吹上小学校に展示されていた。しかし、廃車後15年経った1988(昭和63)年に開催されたさいたま博覧会の目玉として、見事な復活を遂げて以来20年以上活躍を続けている。

期間運行の「パレオエクスプレス」は、普通乗車券にSL座席指定券(700円)またはSL整理券(500円)を購入すれば乗車できる。あらかじめ決められた運行日しか走らないので注意したい。
沿線には秩父という一大行楽地・観光地があるため、ローカル輸送だけでなく、観光客の足としても一役を担っている。豊かな自然にあふれ、長瀞駅近くの宝登山のハイキングコースや宝登山ロープウェイには多くの観光客が集まる。中でも長瀞ライン下りは、荒川の急流と静かな流れの両方を楽しめる長瀞観光の定番だ。また、「関東の駅百選」に認定された長瀞駅木造駅舎や親鼻駅から上長瀞駅の間に架かる荒川橋梁、秩父三十四ヶ所観音霊場など見どころも多い。

開業年: 1901(明治34)年
営業キロ: 71.7km
所要時間: 約2時間(普通列車/羽生駅~三峰口駅)1時間30分(急行列車/羽生駅~三峰口駅)
動力方式: 1500V直流電化、蒸気
運行車両: 1000系、5000系、6000系、7000系、7500系、12系客車、C58形蒸気機関車ほか
営業本数: 平日42本・土休日48本(羽生駅~三峰口駅)、ほか区間列車とSL列車あり
主な観光スポット: 長瀞ライン下り(長瀞駅から徒歩約1分)、
宝登山ロープウェイ(長瀞駅から徒歩約15分)、
秩父まつり会館(秩父駅から徒歩約3分)

写真提供:松尾諭