小湊鉄道

1925年の開業時から変わらない上総鶴舞駅。ドラマやプロモーションビデオの撮影が頻繁に行われている

小湊鉄道は、五井駅から上総中野駅まで千葉県市原市と大多喜町を運行する39・1kmの路線。起点となる五井駅ではJR内房線と接続し、上総中野駅ではいすみ鉄道に連絡する。五井駅へは東京駅から特急「さざなみ」に乗って約40分、総武本線を経由しても1時間程度と首都圏からのアクセスも良好だ。

停車中のキハ200形。土日、祝日はほとんどが無人駅となるため車掌が車内できっぷ販売をしている

クリーム色とオレンジ色のツートーンカラーのディーゼルカーに揺られて、のどかな里山を走る。五井駅を発車すると、列車は閑静な住宅地の間を抜ける。上総牛久駅を過ぎ田園地帯に入ると、高滝駅付近からは線路が山間を縫い、エンジンが唸りを上げる。全列車に乗務する車掌はすべてが女性で、2007(平成19)年には女性運転士まで誕生している。

五井駅に展示されているSL。左端がイギリスのベイヤーピーコック社製、真ん中と右端は、アメリカのボールドウイーン社製

首都圏に近いわりに、非電化・単線で駅舎や車両が独特な雰囲気をもっているため、沿線各所の駅や施設がテレビや映画のロケ地として使われることが多い。房総半島の名勝地でもある養老渓谷へは養老渓谷駅が玄関口となる。秋の紅葉時期はもちろん、これからの新緑シーズンも渓谷美を堪能できる。駅から1kmほど下ると養老渓谷温泉郷だ。
小湊鉄道という社名は、もともとの目的地として設定していた安房小湊にちなんでつけられたが、結局、工事が上総中野駅まで開通した時点で中断されてしまった。1934(昭和 9)年に開業した国鉄木原線(現いすみ鉄道)が接続されたことで安房小湊駅への延伸は果たされなかった。

すべての車両がキハ200形で運行されており、昭和30年代の車両も現役で走っている。五井駅には大正時代に活躍したイギリスやアメリカ製のSLが展示されている。

開業年: 1925(大正14)年
営業キロ: 39.1km
所要時間: 約1時間(五井駅~上総中野駅)
動力方式: 内燃
運行車両: キハ200形
営業本数: 平日7本・土休日12本(五井駅~上総中野駅)、
平日9本・土休日6本(五井駅~養老渓谷駅)、
平日39本・土休日22本(五井駅~上総牛久駅)、
平日・土休日2本(五井駅~里見駅)
主な観光スポット: 上総国分寺跡(上総村上駅から徒歩約15分)、
高滝湖(高滝駅から徒歩約20分)、
市原ぞうの国(高滝駅からクルマで約5分)、
養老渓谷温泉郷(養老渓谷駅から徒歩約15分)

写真提供:谷崎竜