vol.9 【About a Compus】
コンパスを持って鉄道旅に出よう!
コンパスは鉄道旅の強い味方
コンパスは鉄道旅に無用と思うかもしれないが、そんなことはない。撮影行で太陽の位置を確認したり、地図を片手に廃線跡をめぐるときに携行すれば意外と便利だ。
ここでは鞄の中に地図といっしょに入れておきたい、主なコンパスを紹介しよう。ほかにも対象物の距離が測れるモデルや計測器をパッケージしたコンビネーションモデル、ミリタリー仕様のヘビーデューティーモデルなど、さまざまなコンパスがある。
スントのコンパスで“宮脇俊三”に近づこう
“乗り鉄”趣味の開拓者・宮脇俊三氏は国土地理院発行の「5万分の1の地形図」を見やすいように折り畳み、全行程分を鞄に入れて鉄道旅に出た。数日の旅ならば、何十枚にもなったという。
旅の途上では鞄を傍らに置き、車窓が変われば地図を取り出し、飽くことなく眺めた。視線は時折、車窓に移り、また地図に戻る。そして、あたかも列車の外からパノラマ俯瞰しているように頭の中に、精緻な風景を描き出す。これは鉄道紀行作家に必要不可欠な、「風景の中に自分を置く」自己客体化作業だった。ただ、これは風俗・地誌に深い造詣を持つ氏だからこそ可能な離れ業。凡人にはそうできることではない。
しかし、その境地に近づける道具がある。誰でも知っているコンパスである。言うまでもなく地図とコンパスは不可分のアイテムだが、ここに紹介する「SUUNTO TANDEM」は、コンパスに水平機、縮尺換算目盛り、換算表が付いたコンビネーションモデルだ。
もともとは建築物の高さなどを測る目的で開発されたものだが、水平機は傾斜計としても使えるので線路の勾配が確認できる。オイルが封入されたコンパスの精度も高く、なにより、所有欲をくすぐるデザインがいい。欲を言えば、これと一緒にプレートモデルを携行すれば完璧だ。
地図とこうしたアイテムを使いこなせれば、地図の等高線と記号の「力」を借りて、宮脇氏が鉄道旅で行っていた自己客体化作業が自分のものになる!