第6回 南風

 四国での特急列車の登場は比較的遅く、山陽新幹線が岡山まで延伸された1972(昭和47)年3月のことである。高松~松山・宇和島間の特急「しおかぜ」と高松~中村間の特急「南風」が設定され、キハ181系26両を新製して運転を開始した。当初は1往復のみであったが、東京~宇野間の寝台特急「瀬戸」と宇高連絡船を介して宇野で接続するダイヤが組まれた。

第一吉野川橋梁を渡る「南風5号」。下り方には非貫通形の先頭車両が連結される(三縄~祖谷口)

 1975(昭和50)年3月には2往復増発され、1986(昭和61)年11月にキハ185系による1往復が加わった。1988(昭和63)年4月に瀬戸大橋線が開業すると、「南風」は岡山発着となり、高松発着列車は「しまんと」に改称。同時に両列車はエル特急に指定された。
 急勾配や急カーブが連続する土讃線における特急列車のスピードアップを図るため、世界初の振り子式気動車2000系が開発され、1989(平成元)年3月から先行試作車TSEを「南風」と「しまんと」の臨時列車に使用する。2000系量産車が増備されるとキハ181系とキハ185系の運用が終了し、1991(平成3)年11月には「南風」の全列車が2000系に統一。2000系は今やJR四国の特急形気動車の代名詞的存在だ。「南風」は基本的には高松運転所と高知運転所の2000系を使用するが、一部に改良版のN2000系が混在する場合もある。

振り子機能を生かして山間の険路を駆ける2000系。美しい棚田が里山の秋を演出(豊永~大田口)

 現在は14往復にまで増大した「南風」のうち、4往復が2000系「アンパンマン列車」として運転されている。1号車指定席にアンパンシートを設け、外観と内装にアンパンマンのキャラクターをデザイン。「南風」には高知運転所配置の3両編成(グリーン)と土佐くろしお鉄道所属の4両編成(オレンジ)の2種類がある。予讃線、高徳線、徳島線の特急列車にも「アンパンマン列車」があり、異なるデザインの2000系が充当される。

 

宿毛発「南風6号」は「アンパンマン列車」で運転。海沿いを走る安和では車窓いっぱいに広がる安和海岸を満喫できる

 JR四国では最長距離となる「南風」は山あり海ありの険路として知られる土讃線がメインステージだ。香川・徳島県境の猪ノ鼻峠では吉野川が寄り添い、秘境駅として名高いスイッチバック構造の坪尻駅がある。大歩危・小歩危の景勝地、繁藤~土佐山田間から眺める雄大な高知平野、須崎~影野間から垣間見えるリアス式海岸などがおすすめの車窓絶景ポイント。窪川からは土佐くろしお鉄道に入り、佐賀公園~土佐白浜間では黒潮の大海原が楽しめる。終着駅の宿毛は冬の「だるま夕日」が有名な港町だ。

 

車両形式: 2000系
運転区間: 岡山~宿毛
走行距離(営業キロ): 318.0km
最高運転速度: 120km/h
営業運転開始日: 1972年3月15日
所有会社: JR四国高松運転所・高知運転所

February 2025

2025年2月

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