第4回 やくも
出雲国(島根県東部)へ向かう特急「やくも」の列車愛称は、出雲にかかる枕詞である「八雲立つ」にちなんでいる。その象徴としてヘッドマークには8つの雲が図案化されている。「やくも」の愛称名は1959年9月に米子~博多間の準急列車で初めて使用され、1965年11月に東海道新幹線から接続する新大阪~浜田間の特急列車にも採用された。1972年3月の山陽新幹線岡山開業に伴って、岡山~出雲市間を山陽本線・伯備線・山陰本線経由で結ぶ特急列車として運行を開始した。
車両は特急形気動車のキハ181系を使用していたが、1982年7月に伯備線全線と山陰本線伯耆大山~知井宮(現在の西出雲)間が電化されると、381系特急形電車に置き換えられた。この381系は自然振子式の車体傾斜装置を搭載し、カーブ通過時に遠心力で車体を傾斜させて高速で通過することができる。中央本線の「しなの」や紀勢本線の「くろしお」に投入され、急カーブが続く路線でのスピードアップに大きく貢献した。「しなの」は383系に置き換えられたものの、「くろしお」および「スーパーくろしお」は現在も381系で運用されている。
「やくも」に使用する381系は2007年から「ゆったりやくも」用にリニューアルされ、グリーン車を先頭車に統一し、座席を中心とした車内設備の改造を行った。普通車の全座席にホールド感のあるバケットシートを取り入れ、グリーン車の座席配置を1+2列のゆったりとした3列シートに改めた。外観はホワイトグレーとディープレッドに塗り分け、ナチュラルグリーンの細いラインを入れた塗色に変更。大山の冠雪と出雲大社の巫女をイメージしている。「やくも」は出雲市方の1号車をグリーン車とした4両または6両編成(多客期は最大9両編成)で運用され、岡山~出雲市間を15往復する。そのうち8本の列車に前面展望が楽しめるパノラマグリーン車を連結している。
伯備線内では振子装置を駆使して、最高120km/h運転を行っている。険しい山間部を抜けると、伯耆溝口~伯耆大山付近では中国地方の最高峰である大山(伯耆富士)が車窓に現れるはずだ。しかし、山陰地方の気象条件は厳しく、美しい山容が眺められかどうかは運次第…!?
車両形式: | 381系 |
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運転区間: | 岡山~出雲市 |
走行距離(営業キロ): | 220.7km |
最高運転速度: | 120km/h |
営業運転開始日: | 1972年3月15日 |
所有会社: | JR西日本後藤総合車両所 |