第2回 指宿のたまて箱

真っ青な錦江湾をバックに走る「指宿のたまて箱6号」。(瀬々串~平川)
九州新幹線(鹿児島ルート)の全線開業に伴って、鹿児島中央~指宿間に登場した特急「指宿のたまて箱」。なんともユニークな列車名である。これは指宿に伝わる竜宮伝説にちなんで名付けられたもので、「いぶたま」の愛称があり、列車の至るところに「IBUTAMA」とローマ字書きされている。海側が白、山側が黒と車両を真っ二つに分断したような大胆なカラーリングが目を引く。玉手箱のイラストと玉手箱を包む紐をアレンジした楽しい外観だ。この「いぶたま」のデザインは個性的な列車のデザインで知られるドーンデザイン研究所の水戸岡鋭治氏が担当した。

海側の座席に人気が集中するが、山側からは南国らしい風景も眺められる。(宮ヶ浜~二月田)
ドアが開くと煙に見立てた霧が噴き出す演出があり、さながら“走る玉手箱”のようだ。車内には子ども向けのコーナーや海に面した1人がけの座席(回転椅子)も数多く設置。全席指定席であるが、座席の種類はバラエティに富み、海側と山側ではシートの色も異なっている。車両は国鉄時代に製造されたキハ40系(キハ47)気動車2両をリニューアル改造したもの。今でも全国各地の普通列車に運用されるスタンダードなディーゼルカーであるが、JR九州内では特急「はやとの風」や観光列車「いさぶろう」「しんぺい」などにも使用する。

「指宿のたまて箱」は指宿までの運転であるが、その先にはJR最南端の駅として知られる西大山駅がある。
指宿方の1号車には船舶用のチーク材を使用。大型テーブルを備えた4人用のコンパートメント(ボックスシート)や海に面したカウンターのある回転椅子、車椅子のままで海を眺められるスペース、山側にはソファ席も設けられている。一方、鹿児島中央方の2号車は南九州産の杉材を使った車両。海側の座席は全席回転椅子で子ども用のキッズチェアも用意されている。指宿に関する書籍や絵本が集められた本棚は1号車・2号車ともに山側にあり、自由に閲覧することができる。 特急「指宿のたまて箱」は鹿児島中央から指宿まで錦江湾に沿った指宿枕崎線を約1時間かけて走る。所要時間こそ快速「なのはな」と変わらないが、観光特急として新幹線に接続し、一日3往復が設定されている。車掌は乗務しないワンマン運転であるが、車内販売や観光案内などを行う客室乗務員がアテンドしてくれるので安心だ。
車両形式: | キハ47 |
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運転区間: | 鹿児島中央~指宿 |
走行距離: | 45.7km |
最高運転速度: | 85km/h |
営業運転開始日: | 2011年3月13日 |
所有会社: | JR九州鹿児島車両センター |