第1回 鳴子温泉駅(宮城県・陸羽東線)

「温泉」という単語が入る駅には、流山温泉や京町温泉などのように初めて聞くようなものがあると思えば、城崎や玉造など有名な温泉駅もあってさまざまな顔を見せている。その中で一番にぎわっている駅は陸羽東線の鳴子温泉といえよう。

駅前が一番の繁華街になっていて土産物屋や食堂などが軒を連ねており、伝統のこけしも飾られていた。駅からほど近い湯の街通りの坂道を上がったところに数寄屋風のしゃれた共同湯「滝の湯」がある。総檜造りの湯殿は歴史を誇る温泉地にふさわしい風情をかもしている。ここのお湯は白濁した硫黄泉でPH値は2.8の酸性だが、50mも離れていない隣の老舗旅館「ゆさや」のお湯は薄い緑色をした「うなぎ湯」だ。その名の通り肌にぬるぬるとした感触がする重曹芒硝泉で、PH値も8.1のアルカリ性を示しており、隣同士に全く違う泉質が並んでいる。

鳴子は温泉のデパートと言われるほどその種類が多い。鳴子を中心に東鳴子、川渡、中山平、鬼首を総称した鳴子温泉郷ともなると源泉の数が400もあり9種類もの泉質が揃っている。

この周辺には昔から「かっけ川渡、かさ鳴子」ということわざが残っている。脚気には川渡温泉が効き、皮膚病には鳴子温泉が良いということで湯治場として栄えてきた様子を伝えている。

鳴子では湯治の伝統は今も生きている。「農民の家」という旅館はコンクリート造りの大きなビルだが団体客も呼び寄せてかなりにぎわっていた。館内数か所の湯船には種類の違うお湯があふれ、売店には食品から衣類まで何でもそろえて長期の滞在ができるようにしている。この宿での湯治が昔風だとすると、別の宿では今の時代に合わせた新しい湯治のあり方を模索し始めていた。癒しを求める都会の人たちに農村の作業を体験してもらう湯治には田植えから稲刈りまでを季節ごとに参加してもらうのだ。

そんな新しい試みも魅力的だし、サイクリングロードなどの環境も整備されている。何日でも飽きずに過ごせる鳴子は癒しを求める人向きの温泉地だ。

駅名: 鳴子温泉駅
路線名: 陸羽東線
紹介湯所: 紹介湯所:共同湯「滝の湯」(150円)
旅館「農民の家」(500円)
一言メモ: 清少納言も「枕草子」の中で名湯として玉造の湯をあげており、この玉造は島根県ではなく鳴子のことだという説が有力

November 2020

2020年11月

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